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願い事を叶えたいときに知っておきたい言葉

 古くから伝わる四字熟語やことわざ、名言には、先人たちの知恵が凝縮されています。国や時代背景、慣習が異なるにもかかわらず、先人の言葉が現代に生きる私たちの心に染み入るのは、古今東西変わることのない、人としての生き方や、心のあり方、人と人とを結ぶ絆の大切さを教えてくれるからでしょう。今回は、達磨大師の故事と縁起物のダルマにまつわる言い伝えを紹介したいと思います。

九年面壁(くねんめんぺき)または面壁九年

禅宗の始祖、達磨(だるま)大師(5世紀〜6世紀)が、中国の嵩山の少林寺で、9年間、壁に向かって座禅し続けたという故事。物事を根気強く続けることの大切さを説いている。一方で、故事のいわれは伝説で、「壁のように動じない境地で真理を観る」というダルマの思想が故事を生んだという解釈もある。禅宗が日本に伝わったのは鎌倉時代。

ダルマに片目を入れて念願成就

 新年を迎え、大勢の方が初詣に出かけたことでしょう。初詣の際に、ダルマを買って、さっそく黒目を描いて祈願しため人もいるのではないでしょうか。

 ご存知の方も多いと思いますが、ダルマは禅宗の始祖、達磨大師の姿をモチーフにしてつくられた玩具です。ダルマに手足がないのは、「9年間、壁に向かって座禅を組んでいたために、手足が朽ちてしまった」という伝説によるものだそうです。

 ダルマの祈願法としては、年始にまず片目に黒目を入れて、願いが叶ったときや、年末に、一年間無事に過ごせたお礼として、もう片方の目を入れて奉納するのが一般的です。では、どちらの目を先に入れるかというと、左目が先で右目が後というパターンが一般的な様子。なぜ、左目からなのでしょうか。

左目を描いて願いを叶えた男の話

 実は、ダルマに目を入れて願い事をしたのは、江戸時代の農民だったいう昔話があります。年貢の取り立てに苦しんでいたある農夫が、苦しみから救われたい一心で、縁起物のハリボテのダルマを南向きに置き、朝日が当たるダルマの左目を、少しずつ塗って祈っていました。すると、不思議なことに、願をかけた当日に願いが叶ってしまいます。

 喜んだ農民は、ダルマの右目を書き足しました。そのとき、右目にはちょうど夕日が当たっていてそうです。この昔話がもとになって、年の初めにダルマの左目を入れて祈願し、年の暮れに感謝を込めて右目を塗るという風習が生まれたと言います。ちなみに当時は、縁起物は南側に置くのが習わしだったそうです。

 事の真偽はともかくとして、どうしても叶えたい願い事や大事な勝負に出るときは、やはり縁起をかつぎたくなるものですよね。そして、願いを確実に叶えるためには、達磨の教えの通り、根気強く、辛抱強く物事を続けていくことなのでしょう。(構成・文/松岡宥羨子)

 

参考文献・『ジンクスの不思議』(河出書房新社)

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