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ビジネスに役立つ日本の名言

 古くから伝わる四字熟語やことわざには、先人たちの知恵が凝縮されています。時代背景や慣習が異なるにもかかわらず、先人の言葉が現代に生きる私たちの心に染み入るのは、過去も今も変わることのない、人としてのあり方や、人と人とを結ぶ絆の大切さを教えてくれるからでしょう。今回は、ビジネスシーンで役立ちそうな日本のことわざを紹介したいと思います。

上下万民に対し、一言半句にても虚言を申すべからず

「すべての領民に対してほんの少しでも嘘を言ってはならない」。伊豆、相模の領主となった戦国大名の先駆け、北条早雲(生前の名は伊勢新九郎盛時。1432〜1519年。生年は1456年説も)が遺した家訓、『早雲寺殿廿一箇条』(そううんじどのにじゅういっかじょう)の中の一つ。為政者としての心構えを説いている。

言葉に責任を持ち、人に誠実であることが繁栄の道

 古来より執り行われている夏の重要行事、お盆は、東京、神奈川、静岡、愛知の都市部ほか、一部の地域では今も7月に行われています。2015年は13日が盆の入りですが、実は約500年前(1516年)の7月13日は、北条早雲が三崎城(現・神奈川県三浦市)に攻め入った日。三浦氏を滅ぼした早雲は相模全域を平定し、関東進出の足場を固めました。

 今川氏の家臣として、甥の氏親(今川義元の父)の補佐を務めながら、伊豆、小田原を奪取し、相模国へ進出していった早雲は、歴史の中では、素浪人から戦国大名に成り上がった下克上の代表的人物という捉え方をされてきました。しかし、近年の研究により、室町幕府の申次衆(もうしつぎしゅう。将軍御所へ参上した諸大名の用件などを取り次ぐ奏者)であったことがわかっています。父、盛定も同業、母方の祖父も政所執事を務めていましたから、現代で言うところの官僚一族です。

 そうした環境が影響してか、早雲は領国経営の基本が民との信頼関係の上に成り立つと熟知し、家訓、“万民に対して虚言を申すべからず“を自ら実行していきます。早雲は“国盗り”で得た領地において、兵士が民百姓の財物を強奪したり、乱暴することを禁じたほか、年貢を「四公六民」に軽減し、雑税も免除すると領民に約束。それを言葉通り行うのです。当時の年貢は取れ高の半分、多い時で7割納めることもありましたから、喜んだ領民はこの新領主を支持し従うようになったと言います。かくして早雲の家訓を受け継いだ子孫は、早雲没後も四代にわたって関東の地で栄えることになるのです。

 己の言葉に責任を持ち、公約を守って善政を行えば人も国も治められる……。早雲の教えは現代社会にも通じることで、ことに経営者や人の上に立つ者にとっては重要です。ちなみに早雲は、「四公六民」で減収になった分を小田原城下の商いを盛んにして補ったそうですが、「栄えたければ、また、人心をつかみたければ、一にも二にも誠実であれ」と、現代に生きる私たちに語りかけているような気がします。

(構成・文/松岡宥羨子)


※参考文献
『逆境を打ち破った男たちの名言 武士の一言』(朝日新聞出版)
『戦国武将なるほど事典』(実業之日本社)

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