本格的な冬が到来し、連日厳しい寒さが続いています。北海道や東北地方、日本海側では豪雪に大変苦労されていることでしょう。気象庁の発表によれば、今冬はアリューシャン低気圧が平年より日本寄りに位置して発達し、日本付近の冬型の気圧配置も、平年より強まっているため、全国的に寒気が流れ込みやすいようです。ここしばらく厳冬は続きますので、体を温かく保ちたいものです。
防寒対策として、外出時にダウンジャケットを、寝具に羽毛布団を使用されている方は多いことでしょう。軽くて温かい羽毛は冬に大活躍しますよね。
ダウンジャケットや羽毛布団の品質表示を見ると、「ダウン」「フェザー」とあり、それぞれパーセンテージが記されています。ダウンとは、グース(ガチョウ)やダック(鴨)などの水鳥の胸のあたりに生えている綿羽(めんう)で、小さな羽軸の中心核から放射状に羽枝が伸び、羽枝から、ふわふわとした小羽枝が出ています。ちょうどタンポポの綿毛のような形で、「ダウンボール」とも呼ばれています。一方、フェザーは、中心に固い羽軸を持つ本羽で、左右の羽枝から、さらにやわらかい小羽枝が出ています。
どちらも保温性に優れるのですが、ダウンとフェザーの構造の違いが、熱伝達率や感触の差を生むようです。空気をたっぷり含むダウンのほうが熱の対流を起こしやすく、熱伝達に優れており、ソフトな感触です。そして寒いときには広がって空気をたくさん含み、暑いときは縮まって空気の流れを良くするほか、汗などの湿気を吸い取って外へ拡散する性質も持っています。
保温力は、「ダウンボール」が大きいものほど高いため、ダック(鴨)よりも大型のグース(ガチョウ)や、4、5年ほど育成して羽毛を成熟させた、マザーグースが優れた保温性を発揮します。また、寒い地域で育った水鳥ほど羽毛がふっくらとして大きいので、かさの高さがあり、保温性に優れた高品質な羽毛製品を作ることができるのです。
羽毛布団には一般的に、ダウンと、鳥のお腹付近に生えている、小さくやわらかい羽根、スモールフェザーを混合したものが使われており、スモールフェザーを混合することで弾力性がプラスされます。また、羽毛布団と呼ばれるのは、ダウンを50%以上使用しているもので、ダウンの質と使用率によってグレードが決まってきます。もちろん、羽毛の洗浄や加工、布団生地の素材、キルティング(羽毛の偏りを防ぐための縫製や仕立て)の方法も品質を決める重要な鍵になります。なお、ダウンが50%未満のものは「羽根布団」と呼んで区別しています。
日本では、第二次世界大戦以降、羽毛製品の工業化が実現したと言いますが、現在も、ハンガリーやポーランドなど、羽毛の需要のある国から輸入したり、羽毛製品そのものを生産国から輸入しているのが現状です。
シングルの羽毛布団に利用にされる羽毛は約1.2kgで、飼育されている水鳥から人の手で摘まれたり、機械で採取されます。一羽の水鳥から取れるダウンは、フェザーに比べるとごく少量ですから、1枚の羽毛布団をつくるためには、実に100羽以上の水鳥が必要になると言われています。私たち人間の暮らしを快適にしてくれる水鳥に感謝しながら、大事に使っていきたいものですね。
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