秋の深まりと共に、緑から黄色にその装いを変える銀杏(イチョウ)。落ち葉の絨毯が敷きつめられたイチョウ並木は、まさにこの季節の風物詩ですね。幼い頃、並木道を寄り添いながら歩くカップルに、憧れの想いを抱いた方もいるのではないでしょうか。しかしその一方で、樹木から落ちた実の独特の匂いが苦手だという方もいるでしょう。
イチョウの樹木は基本的に雌雄異株(しゆういしゅ)で、実が成るのは雌木のほうです。熟した丸い実の外側、外種皮を取り除いて乾燥させると、お馴染みの白く固い殻、中種皮が表れます。私たちが食用としているギンナンは、その内側の内種皮(渋皮)を剥いた胚乳の部分です。
ギンナンの主成分は、デンプン、糖質、脂質、タンパク質ほか、糖質をエネルギーに変えるビタミンB1、老化や肌荒れ防止効果があるビタミンB2、抗酸化作用が高いビタミンC、E、βカロテンなど。また、体内の余分な塩分の排出を促して血圧を下げる働きをするカリウムも豊富に含んでいます。漢方では、咳をしずめ、気管・気管支にたまった痰を除去する作用と、尿量を抑制する作用があるとされ、夜尿症・頻尿の改善にも使われています。
けれども、体に良いからと言ってギンナンを一度に大量に食べると、嘔吐、消化不良、呼吸困難、けいれんなどを起こすことがあります。ギンナンに含まれる、4’-メピリドキシン’という物質が、脳内の神経物質の生成を促すビタミンB6の働きを妨害し、ビタミンB6欠乏症を招いて中毒を起こすと考えられているからです。したがって、幼児は食べないほうが無難ですし、大人でも何十粒も食さないよう気をつけたいものです。
一方、イチョウの葉には、フラボノイドや特有成分のギンコライドなどが含まれており、葉を原料として作られたイチョウ葉エキスには、血管拡張作用、動脈硬化の改善、アレルギーの抑制作用、抗炎症作用などのさまざまな働きがあると言われています。その有効性からか、イチョウ葉食品も市場に多く出回っています。葉の抽出物から作られた錠剤やドリンク、葉を粉末にしたカプセル、イチョウ葉茶などの健康茶も店頭で目にされるでしょう。
また、抗菌作用があることも分かっており、防虫効果もあるとも言います。イチョウの葉を栞にして本にはさむのは、こうした理由からかもしれませんね。
ところで、明治神宮外苑では毎年、イチョウ並木を楽しむイベント、「神宮外苑いちょう祭り」が開かれています。模擬店をはじめ、全国各地の特産品店が軒を連ねる会場は、例年、たくさんの人でにぎわいを見せます。2017年は、11月17日(金)~12月3日(日) 17日間。(10:00~20:00 雨天決行/荒天中止)
今年の10月は台風も多く、あまり秋晴れを楽しめませんでしたので、お出かけになってはいかがでしょうか。ギンナンや葉にいろいろな効能があることを考えながら見るイチョウの木には、これまでとは違った趣を感じるかもしれません。